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潮風が気持ち良い、ラークのお気に入りの場所。そこからの眺めは最高だった。海に面する丘の斜面を利用してつくられた港町リアンは、海の近くに漁場、そこから上に上がるにつれて、店が立ち並ぶ大通り、民家、そしてここ…リアン橋。リアン橋は別名「サファイアブリッジ」と呼ばれている。それはここから眺める海が、まるでサファイアのように美しいからだ。 海の方から吹き上げる潮風は、ラークの橙色の髪を揺らして空へ舞い上がる。いつもは無口なラークも、ここで誰かと話す時は決まっておしゃべりになる。 「ラークぅ!!」 明るい声が、彼の耳に届いた。ラークの表情が、途端に崩れる。 「やぁ、ティニア。どうしたんだい?」 「もう! どうしたんだい?じゃないでしょ。今日は帝都の事を教えてくれる約束じゃなくて?」 ティニアは唇を尖らせて彼に言った。ラークはすまなそうに笑うと、海へ視線を戻した。 「ごめん。忘れてた訳じゃないんだけど…今日もここからの眺めを一番に見ておきたくてさ」 「ラークってば、早起きなんだもん。フツーはね、こーゆー小説の主人公はネボスケなのよ!」 ティニアはそうワケの分からない事を言うと、ラークの腕を引っ張った。 「さあ、もういいでしょ? 早く、帝都の事を教えてよ」 「うん、そうだね…まず、何から話そうか…」 ラークは考えた。そしてゆっくりと口を開いた。
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