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次の日の朝、自分の部屋で入学式に言うお祝いの言葉を考えていたら、玄関の方から騒がしい音が聞こえてきた。
早速引っ越してきたらしい。
筆記具を片付け椅子から立ち上がると部屋を出て玄関に向かった。
同じ寮からの引っ越しでも運ぶ手伝いはいるだろう。
同室に成るにあたって話しておきたいこともあるし。
しかし―――
玄関で私が見たのはたくさんの人。
芳澤の姿が見えないほどだ。
声をかけるタイミングを失い、ガヤガヤ煩い奴らを呆れたように見ていると、その中の一人が私に気が付き、目を見開いた。
「うわっ!!マジで会長じゃん!?」
その声にみんな勢い良く顔を上げた。
「やべぇ!俺こんな近くで見んの初めて!!」
「本当に久臣は会長と一緒なんだ!?羨ましい!!」
口々に自己紹介したり騒ぎだす。
腕を組み壁に寄り掛かっていたが、閉じていた目を開いて何も言わず睨み付ける。
それだけでその場は静まり返った。
「…って、おまえら邪魔」
そこに場違いなほど明るい声とともに芳澤が割って入ってくる。
すぐに私に気が付き人懐っこい笑みを浮かべた。
「騒がしくしてわりぃ、すぐ終わらせるから」
「…何か手伝うことはあるか?」
「こんだけ人数居るから大丈夫」
…だろうな。
断られると分かっているからこそ聞いた。
「部屋は手前のほうが空いている。リビングや他の場所にも好きに荷物を置いてかまわない。共有の場所は…散らからない程度に」
言いたいことだけ言って踵を返す。
背後からは
「やっぱコエー」
という呟きが聞こえたが、そうやって突き放されたほうが楽だった。
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