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「そんなこと謝っても意味ないと思うが……。俺はお前のドジ好きだぞ? 面白いからな」
「……褒めてないよね? それ」
ばれたか。
「う~……ひどいよぉ!」
相変わらず涙目で、その綺麗な髪を揺らしながら俺に文句を言ってくる。
意地悪したくなる可愛らしさだが、まぁ今日はこの辺にしておこう。
実は、こいつの父親はこの夢列車を管理してる夢列車管理局の局長さんで、下手にやり過ぎると俺の首が飛ぶ可能性がある。
いや、慣用句じゃなくて本当の意味で。
全ての人々が見惚れる優雅な動きで俺の首が体と涙のお別れだ。全米が泣くな、これは。
「はっはっは。悪い悪い。ところでお仕事の最中だったんじゃないのか?」
「あっ、そうだった! まもなくバングラデシュ人民共和国の首都、ダッカに到着します! お降りの際はお忘れ物のないようにお願いしましゅ!」
「……噛んだな」
「……ごめんね?」
申し訳なさそう上目遣いで言うエリナ。
何か最近思うんだが、こいつとにかく謝る癖がついてそうだな。
「……とりあえず、早く行った方が良いぞ」
「うん! そうだね!」
タッタッタと小走りに駆けていくエリナの後ろ姿を見守ると、何かまたこけそうな気がしてくる。
「ひゃあ!」
そして、突如鳴り響いた汽笛の音にびっくりしたのか再びその場に転倒した。
「いい加減慣れろよ……」
もうそろそろ、呆れて物が言えなくなりそうだ。と思いながら俺は自力で立ち上がり駆けていくエリナを見送ると再び席についた。
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