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さっきエリナが言った言葉は誰に向けられたのかと言うと、それは降りる『夢』達である。
夢達は普段、魂のようにぼんやりとした丸い玉になって10両目辺りの夢射出車にたくさんいるが、退屈した夢達がそこから出て外を眺めたり、食堂車で食事をとったりしている。
その時の姿は、その夢に出てくる物になっている。友達や家族、たまには化け物みたいなのも。
そして、この辺りで射出される夢達にもう戻れと言っているのだ。
「俺にはあまり関係ないけどなぁ……」
俺はそういう夢ではなく、『江宮ケイリ』という立派なこの列車の乗員だ。
役割は戦闘員。
何故そんな物騒な役割が必要かと言うと、この列車は夢を届ける他、夢に異常が起きた場合、それを解決する任も負っている。
夢と言うのは何でもありな世界。当然、危険な事もあるだろう。
その夢から列車を守るのが、この俺の役目だ。
……最近は平和で、やる事がないけど。
しばらくすると、列車が徐々に減速していく。
やがて、ガコン……と音を経てて完全に止まった。
どうやら、ダッカという所に到着したらしい。
すると……夢射出車からまるで流星が発射されるようにぶわっと幾つもの光が夜空へ放たれた。
それは光の雪みたいになり、この国に、いや周りの他国にまで降り注ぐ。
やっぱ凄いな……と俺は感嘆の溜息をついてしまう。
俺はこの光景が好きだ。こんな仕事をしている理由の一つも、この光景を見るためのものだ。
余韻を残す間もなく、蒸気機関車特有の、力強くて元気付けられるような汽笛の音を轟かせて夢列車は走り出す。
また、次の場所へと光の雨を降らすために。
それが、俺達の仕事。夢列車の仕事だ。
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