嫉妬

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ム「……なんで」 なんで?なんでアイツなの?俺だったら良かったのに 喉から絞りだしたような声は部屋の中で苦痛の音として消えた。 ぼふっ 枕に叩きつけられた携帯は一定の間を開けてイルミネーションが点滅していた。メールを見ないのは怖いから。嫌われるのが怖い。知ることが怖い。何よりそれで嫉妬に狂う自分がいそうで怖かった。 ム「……嫉妬かな」 この醜い感情が何かは知っている。それを認めたくない、だなんて言う程子供でもない。 でも、もしこの感情を知らなかったら ム「…どれだけ楽なんだろう…?」 口にだした言葉は願望。けして現実にはない願望にすぎない。 …ブーブー 携帯が震える。 [着信中 ガード] その字だけで胸が高鳴る自分は ム「末期だなぁ…」 自分を嘲笑うかのような微笑みが1つ。綺麗な月が覗く空に消えた。 ム「…もしもし?」 ガ《あっ!!もしもし!?ムック!?》 ム「ちょっと落ち着けよー」 ガ《だってあんなメールの後に返信が来ないって心配すんだろ!?》 ム「ハハハハハ…まぁ、うん。今日のことは忘れてよ?」 ガ《………》 ム「どうかしたの?」 ガ《……ご、めん》 耐えてる。きっと自分を責めてる。自分のせいだと。 ム「……なぁ」 ガ《……うん…?》 ム「やっぱり忘れないでよ。」 ガ《……うん。分かった…》 こういう時に悟ってくれるのは嬉しいとしみじみ思った。 ム「おやすみ!!」 ガ《……おう!!おやすみ!!》 ピッ ツーツー 今さっきまで愛しい人の声を聞かせてくれていた携帯からは今はもう機械的な音しか出ない。 ム「………っ…」 忘れて?…きっと忘れてくれた方が楽だった。でもそんな簡単なことじゃないんだよ。 視界に入っている茶色いフローリングの床にまた1つ水滴が落ちた。 ム「応えてくれなくてくれなくてもいい。」 ム「少し頭の中にあるだけでいい。」 ム「俺のこの気持ちがあった証拠を」
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