ペット

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玄関の、 いつもそこで寝ているはずの所にコロがいないのを、 寝惚けた頭の片隅で少し不思議に思ったのを憶えているという。 トイレから出てくると、 居間の方からヒソヒソという話し声が聞こえてきた。 それは確かに聞き覚えのある声だった。 彼はそっと居間を覗いた。 最初に彼の目に映ったのは、 体長50cmくらいの人間の男の後ろ姿だった。 その小さな人間はランニングシャツ姿で、 下半身は動物の毛皮のようなものを履いていた。 そしてその人間の傍らに置いてあるのは犬の頭。 まさしくそれはコロの頭に間違いなかったという。 男は言った。 「しかしキツかった。 今日の散歩。 河原のほうまで走らせるもんだからさ、 さすがに中で汗だくだよ」 「確かに犬はキツいかもね・・・」 そう言ったのは、 その向かいで寝転んでいる体長30cmくらいの女性。 傍らには猫の頭が置いてあり、 それはミーコに間違いなかった。 やはり半分だけミーコを脱いで、上はTシャツ姿だった。 そしてもう一人。 体長10cmくらいの男。 これは完全にチースケの着ぐるみを脱いで、 ストレッチをしていたという。 男は聞きなれた高い声で言った。 「オハヨウとかしか言えないのもキツイけど、 やっぱり飛ぶのが一番体力的に疲れるネ・・・」 彼はその体験以来、 ペットを信じられなくなったのだという。
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