一章 橘慶

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13:20 昼休みの屋上 慶がレイと話している。レイは呼ぶと姿を現した。 「成る程…」 「確かに奴はこの街にいる。」 「だが、どうやって探す?」 「下から辿れば上につく。」 「だが、それだと問題が一つ……」 そう言いかけて、慶が言葉を切る。レイは姿を消し、慶は入口の横にあるハシゴを上っていく。 屋上へ行く階段の上には貯水タンクがある。貯水タンクの横は昼寝に最適だ。 そこにクラスメイトの水城陟(みずき のぼる)がこちらを背にして寝ていた。眼鏡をかけた冴えない男子生徒だ。 「……。」 慶はハシゴを下りてから独り言の様に言った。 「続きは後でだ。」 ドアの閉まる音。陟は目を開けた。起き上がり、ハシゴを見詰める。 今日はいい天気だ。
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