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――ある満月の夜の事――。
森の奥の小さな泉に精霊と戯れる一人の少女がいた。月明かりに照らされ、銀色の髪はとても綺麗にその明かりを跳ね返していた。
彼女の名前は『アリシア・ランドルフ』
人間だが、森の妖精、精霊達と暮らしている。
赤ん坊の頃、この森の泉に捨てられた彼女は、妖精や精霊達によって助けられ育てられた、何故捨てられたのか……。
アリシアは『』で生まれた。
アリシアには父と母、そして兄がいました。
父が領主だったので裕福ではあったのだが、ある日父が騙され領主の立場を追われてしまいました。
その後の領主により、『街』の税徴収も厳しくなってしまったのだ。そんな事があり、生まれたばかりのアリシアだが……とても育てられる環境では失くなってしまったのだ。
父が領主を勤めてからは生活が苦しくなるような家族はかなり減ったのだが、それでも生活に苦労する者もいた。
その者達は、生活が出来ない為泣く泣く我が子を森の奥の泉へと沈めるしかなかった。そしていつしか都合の良い言い伝えが出来ていた……。
”我が子ら、森の泉に浮かべしと、我らジーンが戯れん”
誰が言い始めたのか、そんな言い伝えを人々は都合よく信じていた。アリシアの父もまた、それを信じるしかなかった。
そして父達は森の奥の泉へ着いた。
「アリシア……すまないっ!」
「どうしてっ……こんな事に……うぅ……」
「お母さん、アリシア、何処へいくの?」
「アリシアはね……精霊さんになるのよ……」
「へぇー! すごいなっ! ぼくのいもーとがせいれーになったらみんなにじまんできるよねっ! ねっ!」
無邪気にそう言った兄は、残酷な現実をまだ理解出来る歳ではなかった。父、母はそんな兄の言葉にとても心が痛んだ……。
本当は痛んだなんてものではなかった。肢体を引きちぎられるくらいの思いだった。
そして――……。
ドボンッ――……。
アリシアは泉に映った満月の影に沈んで行った……。
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