4人が本棚に入れています
本棚に追加
それから16年という月日が流れた……。アリシアはとても美しい少女に育っていた。ジーンは、この歳になったアリシアに……本当の事をすべて話しました。
「う、うそ……違う! 信じない! 私、私はママの子だもんっ!」
「アリシアっ!」
そう叫ぶとアリシアは森の奥へと駆けて行った。
”どうして? どうして私を捨てたの?
どうして私の人生を勝手に決めたの? ”
アリシアはそんな心の叫びでいっぱいだった。
走り着いた先は、自分の捨てられた泉だった……。するとそこに一人の青年が立っていた……。
容姿はとても美しく、髪は肩位までの銀色、目は澄んだ水の色で、肌はとても白かった。
「!?」
青年は、アリシアに気付くと……とても驚いた表情をし、アリシアに近付いて来た。
アリシアの目の前に立つと、首を振り少し心を落ち着けたようだった。そして優しい声で、話しかけた。
「どうしたんだい? 泣いているのかい?」
「……ううっ」
そんな優しい言葉に思わず涙が溢れ泣き崩れてしまった。青年は何も言わずアリシアの横に座り、頭を撫でる……そして詩を歌い始めた。
”-遥か昔の云い伝え-泉の森の精霊は――優しき慈愛で我らを包まん――……。”
アリシアは、そんな詩に懐かしさが込み上げいつしか涙は治まっていた。
「泣き止んだかい?」
コクッと頷くアリシアに青年は優しく、微笑んだ。
「すみません……もう大丈夫です……。」
照れながら、自分の頭に置かれた青年の手を見上げる。
「あ、ごめん!」
「ふふっ……あははっ……面白いお兄さん……」
そう言って無邪気に笑うアリシアを見ると、何故か青年の目から涙がこぼれた……。
「ど、どうしたの?」
「いや……昔、亡くなった妹に……とても似てたから……」
「……」
「すまない……あ、そろそろ時間だ戻らないと……」
「ねぇ! また会えないの?」
アリシアはとっさにそんな言葉を言い放っていた……。恋愛感情なのかそうではないのかは解らないがこの青年に対し、何らかの暖かい感情を持ってしまったからだ。
「ふふっ……明日ならまた此処に来るよ」
そういって青年は、村の方へと帰って行った。
最初のコメントを投稿しよう!