記憶の欠片

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「ユルサナイ」 ナイフを持った女の人がゆっくり僕に近付いて来る。 どこかで聞いたことのある声。 でも、顔がよく見えなくて思い出せないでいた。 「やめろっ…く、くるな!!」 女が一歩近付く度に僕も一歩下がる。 しかしそんなことはなんの解決にもならず壁にぶち当たる。 「やめろ…やめろ…僕が何したんだよ、お前なんか知らない、知らない、こっちくんな」 僕が叫ぶと女がピタッと動くのをやめた。 女はうなだれたように下をむきナイフを握る手に力を込めた。 「…どい…ヒドイ…私のこと忘れたのね」 ナイフを僕に向け女が走ってくる。 「バイバイ憲ちゃん」 ナイフが僕の胸を刺した。
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