始まりの終わりか終わりの始まりか

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  「……なあ、それ本当の話か?」 「ああ、行ってきた」  聞き手の男が訝るように尋ねると、相手の男ははっきりと頷いた。  しかし詳細な話を求めようにも、本来話し手である筈の男は歯切れの悪い返事をするばかり。  彼曰く、巷の男達の間で噂の『無料で相手をしてくれる絶世の美女』は実在するらしい。 本来であれば彼らのような人並み以下の男は、店で大金を積んででも相手をお願いしたい立場であるが、何故かその美女は相手を選ばず、金銭の報酬も求めないという。  実際に目の前の友人はそれを体験してきたと言うのだが、当の本人の様子を見るに、何故かどうにも嬉しそうではないのだ。 「そんなに良くなかったのか?」 「いいや、最高の時間だったよ」 「ならどうしたんだよ」 「俺はお前だから打ち明けたんだ。俺の『過去』を知っているからな」 「それと女と何の関係があるんだ?」 「……正直、勧めはしない。でも、それだけの価値はある」 「は?」 「判断するのはお前だからな。……行ってみれば解る」  それきり、話し手は多くを語ろうとはしなかったが、彼がこんな都市伝説のような噂話を面白半分に語る性格ではない事を知っている聞き手は、『まるで夢を見ているようだった』というその体験談を信じ、噂の女に会いに行く事に決めたのだった。
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