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トムに呼ばれ仕事へ戻った静雄と別れ、茜は1人公園のベンチに腰を下ろしていた。ひざに置かれた手には、先程静雄からもらったグミが収まっている。そのグミを眺めつつ、茜は静雄の言葉を思い出していた。
『……その、なんだ。甘いのは好きなんだが、…酸っぱいのは、ちっとばかし苦手なんだ。』
(あんなに強いのに、静雄お兄ちゃんにも苦手なものはあるんだ………)
まだ静雄を殺すことを諦めていない茜にとって、この情報はとても貴重なモノだった。故に、この感情は静雄の弱点を掴んだことに対する優越感や高揚感なんだと思っていた。だから彼のことを考えている時間はこんなに楽しいんだ、なんて。自分の本当の気持ちに気付くことが出来ない少女は、殺しのターゲットである彼からもらったグミを口に運ぶ。
さっきよりも少し甘さの増したグミを、舌で転がし続けた。
(グミの話/かなり造提)
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