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「俺は物を愛でる趣味はないし、それ以前にあいつの所有物なんかを大事に扱う意味がわかんない。……あぁ、でもこれはもう所有物ではないか。ただの落し物だよね。」
ただの落し物であるこのサングラスを壊したところで、このむしゃくしゃした気持ちが治まるわけでもないし、そんなことをしたって自分が惨めになるのはわかりきっていたので、臨也はあっけなくサングラスから手を離した。カシャン、とやる気のない音をたてて再び地面に転がったそれには目を向けず、新宿にある自宅のアパートへ足を向けた。
-----ドゴッ
「っ……!」
右斜め前方の地面に不自然に突き刺さった道路標識と、右肩に走る痛みに顔をしかめたのは一瞬で、くるりと体ごと振り返った時には、いつもの余裕を含んだ表情を張りつけていた。しかし、不機嫌さを含んだ瞳は隠さない。
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