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産声を挙げた赤子のままに、成長を止めた闇よりドス黒い負の感情
深淵より深い負の感情。
それはまるで種だ。
それは決して芽吹くことがない種だ。
それは決して光が当たる事のない芽だ。
それは決して
咲き誇ることのない腐れた蕾だ。
「うぐっ…!!?」
胃が呻くように跳ね回り胃液が逆流し口から吐き出される。
「…か…はっ…!!」
食べたはずの四角い飴玉はそこには何故かなかった。
何を考えているんだ俺は。
とてもじゃないが非現実的すぎる。
まるで御伽噺にでてくる『吸血鬼』そのものじゃないか。
気づけば眩暈は治まり、狂って見えた周りの景色もいつも通りの景色に戻っていた。
ビルはいつも通りの高さで立ち並び、人は肌色をしていてきっちりと動いている。
いつも通りだ。
しっかりと確信を得た所で立ち上がる。喉の渇きは依然変わらないけれどどこかで潤せば言いだけの話。
「ねぇ、今どんな気分?」
目の前にいる女が嬉しそうに語りかけてくる。
知らない女だ。さっき肩がぶつかっただけの関係。
こいつは飴玉を落とし、俺は暇つぶしに買った分厚い小説やゲームソフトが入った袋を落とした。
いつもなら物腰を低くして対応する所なんだろうけど、今はそんなことより喉が渇いている。
尋常じゃないほどに。
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