ダイス・ダイブ

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「何が?そんなことよりちょっとごめん」 幸か不幸か、胃液のおかげで喉が掠れて声が出ないことはなかった。 「あっ…」 女の横を通り過ぎ、すぐ目の前にある自動販売機の前へ。 小銭を乱暴にポケットから取り出し、乱暴に投入し、何でもいいから思い切りボタンを押す。 喧しい音を立てて落ちてきたジュースを雑に取り出し、力を込めてプルトップを引きあげ、思い切り高く上げ口へ水分を運ぶ。 その液体が喉を通過した瞬間、気づく違和感。 「…?」 おかしい。 喉が渇いたから飲んでいるというのに、喉の渇きが全く癒える気配がない。 むしろさっきより強くなった気がするのは気のせいだろうか。 「喉の渇きが癒えない?」 ドキリと心臓が跳ねた。 このなんとも言えない不快感を、どうして目の前の女は察することが出来たのだろう。 それほどまでに分かりやすく顔にでていたのだろうか。いや、むしろ顔だけで判断できる方がもっとおかしい。 気づけば、喉の渇きなんてほったらかしで女を見ていた。
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