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「貴重な水はあとすこし、か…」
身体に布をこれでもかと巻きつけた人影はつぶやいた。
お世辞にも綺麗とはいえない黄土色の布は、その大きな人影をすっぽりと覆い隠し、周りに広がる砂だらけの大地の保護色となっていた。
時折視界に移るサボテンですら、生気が失せ、枯れかけたものばかりの死の大地、砂漠。
情け容赦は一切ない、眩しいほどの日差しがこうしている間にも体力を奪っていく。
その歪な人影は大きさから直ぐに男だと分かるほどに大きく、そして布の下に何かを隠していた。
男はどこへ向かうのやら、しぶしぶ歩を正面へ進ませたとき、それは起こった。
低い重低音。
揺れる大地。
それは砂漠には似合わない
「地震、か…参ったな、こんなときに」
男がつぶやくのとほぼ同時。
目の前の砂の山が爆発したように宙へ舞う。
その衝撃はすさまじく、男が布で隠してるのにも関わらず、思わず腕で顔を隠すほどだった。
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