1866人が本棚に入れています
本棚に追加
「母さん?」
「結衣に会いに来ました」
私が母さんを呼んだのを遮るように、亮太が意味不明な発言をした。私は戸惑い、彼の顔を見るけれど至って真面目だった。
「そう……どうぞ」
母さんは優しく微笑み、私たちを家へ促した。その際に、母さんの顔を間近で見ると酷く痩せていた。目の下にはクマがくっきりとできていて、大分老けたように見えた。
「結衣……大事なこと忘れてる気がするって言ったよな」
「うん」
ああ、頭が痛い。
亮太は一つの部屋の前で止まった。自分の家なので、ここが何の部屋かはすぐに分かった。
和室だ。
「お前が忘れてることだよ」
亮太はそう言って、勢いよく襖を開けた。
最初のコメントを投稿しよう!