ゆっくり。

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「おはよう」 暗い面持ちで教室に入る。すると既に啓介君と美香が来ていた。泉君の姿は見えない……。 「おはよーっ」 飛びついてきた美香は、目が赤かった。その様子から既に泣いてきたことが予想される。啓介君はそんな美香を愛しそうに見つめて笑っていた。 「本当に今日で最後なんだね」 私がそう言うと、2人が少し間をおいて頷く。 本当に色々あった高校生活だった。たくさんのことがあったけど、後悔は残したくないよね。 私……後悔してない? 「あ、泉だ!」 急に美香が叫んだ。すると教室の入り口を素通りしようとする泉君が。おかしい、いつもなら構わず入ってくるのに。 「ああ……」 泉君は顔を一度だけこちらへ向け、私とは一切視線を交わすことなく自分の教室へと歩いていってしまった。 「なんか様子おかしくね?」 気付いた啓介君がそう言う。美香も心配そうな顔をしていた。 きっと、私のせいなんだよね。
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