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「待ってろよー、熊」
ガラス越しでぬいぐるみに声をかける翔に、思わず笑ってしまった。
「馬鹿じゃん」
くすくすとこぼれる笑いは止まらなくて。一生懸命な彼はコインを投入すると、狙いを定めてアームを動かした。
どきどきしながら、その行く末を見守る。アームがぬいぐるみに触れる。
お願い、取れて!
しかし、残酷にもアームはぬいぐるみを引っ掛けることなく元の位置へと戻ってきていた。
「あー格好悪り。もう1回」
悔しそうにまたコインを入れる。だけど取れない。それの繰り返し。
翔の財布はどんどん軽くなるばかり。
さすがの私も良心が痛み、彼の手を止めた。
「もういいよ。別のしよ」
だけど翔は納得せず、またコインを入れた。
「いーや!最後の百合の願い、絶対きいてやりたいんだよ」
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