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続きの言葉を伝えようとした時、私は口を開くことができなかった。
翔が首を傾げ、こっちを見ている。だけど私の視線はその後ろ、車の行き交う交差点に釘付けだった。
「裕一……」
ここは、私と裕一が別れを交わした交差点だった。そんな場所で、違う男に想いを伝えようとしていたなんて。
「裕一?」
不思議そうな翔も、もう視界には入らない。
見えているのは、交差点の真ん中で悲しそうに私を見ている裕一だけ。
どうしてそんなに悲しそうな顔をしているの?
私が裕一を裏切ろうとしたから?
取り返しのつかないことをしてしまったと、心の中に生まれる罪悪感。胸が激しく痛んで、知らず知らずのうちに涙が溢れていた。
「大丈夫か!?百合!」
「触らないでっ!」
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