さよなら

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大切な人を失った時の辛さ、苦しさ、悲しさを、私はよく知っているはずなのに、あんなことをしてしまった自分は馬鹿だ。 どんなに苦しくても、辛くても、生きるよ私。 それでね、いつか決心がついたらちゃんとお別れ言いにいこうと思う。今はまだ辛いけど、必ず行くから。 それから7年後。 「翔、早く支度してよ!」 「急かすなって百合」 身支度を済ませた私は、行動の遅い翔を急かす。 2年前、私たちは結婚した。あれからどんなときも私を支え続け、裕一の話を聞いても私を想い続けてくれた。 元は一瞬でも傾きかけた人、段々惹かれていった私たちは、幾年の交際を経て結婚。 そうして、つい数ヶ月前には子供も誕生していた。 「文也のパパはだらしないねぇ」 腕に抱く我が子、文也にそう話し掛ける。まだ口もきけないこの子は、腕の中で安らかに眠っていた。
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