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光は怒っている私を見て焦り、おろおろしていた。かと思えばいきなり抱きしめられた。
「ご、ごめん。俺だってもちろんそういうことしたいんだけど、まだ菜々を大事にしたいっていうか、菜々は俺にとって本当に大切な人だから……まだできない」
抱きしめられて、そんな風に熱く語る光。きっと顔も真っ赤なんだろうな。
だってこんなにも心臓が早鐘を打ってる。
……あれ。光の心臓だけじゃない。動悸が激しくなっているのは、私も同じだった。
こんな経験初めてで、どうしていいのか分からない。だけどこんな自分が嫌で、早く動悸を治まらせたい。
「分かったから、離して」
「あっ、ごめん!」
さっきから謝ってばかりの光に、何だか笑えてきてつい笑みをこぼした。
「謝ってばっかだね」
「……笑った」
「え?」
「菜々がちゃんと笑った!すっごい可愛い!」
いきなりそんな風に喜ぶから、恥ずかしくなってしまう。そして気づいた。いつもの光と同じように、自分の頬が赤く染まっていることを。
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