みちしるべ

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私は自分の気持ちの変化にただ戸惑っていた。 子供じゃないからもう分かる。私は光を好きになりかけている。 だけどそれを止める自分がいる。私は人を好きになったらいけない。危険。 キケン。 「光……私、帰るね」 「え、もう?……送るよ」 「いい。光、別れて」 「え!?」 自分でも驚いていた。こんなにもすんなり、その台詞を言えた自分に。 光はある意味、初めての男だった。 初めて私から誘った男。 初めて私から別れを告げた男。 そして、 初めて私が好きになった男。 「なんで!?まだ怒ってる?ごめん本当、別れるとか」 「別れて!」 私は光の言葉を遮り叫んだ。 びくりと肩を揺らし、黙りこくる光。私はそんな彼を冷たい目で見下ろし、言った。 「最初からあんたなんて好きじゃなかったのよ。ただ、遊べるから付き合っただけ。でもその価値もないようだし。もう別れるから。じゃあね」 冷徹だ。 自分が悪魔と呼ばれるのも、これだから納得できる。 光の傷ついた顔が、脳裏に焼き付いて離れない。苦しい。胸が。
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