みちしるべ

16/23
前へ
/304ページ
次へ
「菜々ちゃん。君は今、少し難しい病気に蝕まれているんだよ」 そう、医者から告げられたのは2年前のことだった。 私の中で何かが音をたてて崩れる。お母さんとお父さんは、必死に涙をこらえ難しい話を聞いていた。 長い病名や、詳しいことは私には理解できなかったが、ただ分かることは、自分が死ぬかもしれないということ。 目の前が真っ暗になって、その日私は闇に落ちた。 「手術をすれば助かる可能性はあります。しかし、菜々ちゃんの体だと手術でかかる負担が大きく、成功率は40%です」 40%。半分もないのだ。 手術をしても死ぬかもしれない。しなくても死ぬのだ。 私には選べなかった。 手術をすれば、その時に死んでしまうかもしれない。 しなければ、最高で20歳くらいまでは生きていられると言われた。 死ぬということに恐怖を抱いていた私は、手術をしないことに決めた。お母さんたちは病気が進行するまえに、手術をしてと懇願したが、私は首を縦に振らなかった。
/304ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1866人が本棚に入れています
本棚に追加