みちしるべ

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それから私はおかしくなったのかもしれない。一度付き合った男に無理矢理抱かれ、それでもいいと思った。 どうせ死ぬのだから、体なんて大事にしなくていい。 ただそう思って生きてきた。それなのに光は言った。 私が大切って。 今までの男とは違い、真っすぐに私を愛してくれたのだ。それは求めていたことでもあり、恐れていたことでもあった。 誰かを好きになってしまえば、死がまた怖くなる。その恐怖に私は苛まれる。 だから光を傷つけてでも、別れなければいけなかった。 手術をしていない私の体は弱りきり、病気は着々と進行している。長くは彼といられない。 もっと一緒にいたかったな。 暗闇の中を突き進み、私はどこに向かうのかな。あの世? それでもいいかな。 そう思っていたときだった。 「菜々、菜々!」 暗闇に光が灯った。 大好きな光の声だった。
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