みちしるべ

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「でも菜々は変わってた。作り笑いが板について、そして体を大切にしないことばっかり……たくさんの男と遊んでる菜々は、きっと本心ではこんなことしたくなかったはず。そう想ったらもう、ただ見ているだけなんてできなくて、ついに告白したんだ」 私はただ黙って話を聞いていた。胸にじんじん伝わってくる想い。 「俺をあんなに冷たく突き放した時、菜々が1番辛そうな顔してたんだよ。俺を想ってあんなこと、言ったんだよね?」 気付けば涙がこぼれていた。今まで自分の気持ちは、口にださずに生きてきた。 手術が、死ぬことが怖いことも。 何も言わないのに、光は分かってくれたのだ。こんな私のすべてを知っても、想ってくれる。 「そうだよ。好きだよ光が。だけど駄目なんだってば!もうすぐ死ぬ。今まできたことなかった発作だってきた。私は闇の中さ迷い続けて、もう無理なんだって!」 止まらない涙はシーツに黒いシミを作る。涙でぼやけて光の顔が見えない。
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