瞳を閉じて

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瞳を閉じて。 そこにいるのはあなたの一番大切な人。 そこにいるのは誰? 私は目を開けた。 昔、お婆ちゃんに教えてもらったジンクス。あの時は誰が出てくるのかいつもわくわくした。 だけどもう、随分長いこと誰も見えない。 「莉奈?」 「ん?」 隣にいた拓哉に呼ばれ、私はさりげない返事を返した。拓哉は安心したように息を吐き、「なんでもない」と言った。 きっと私がぼうっとしているから、気になったんだろうな。 拓哉とは付き合い始めて7ヶ月になる。 出会いは高校。同じクラスになって、しばらくして告白され今にいたる。 「そろそろ帰るか」 1日デートだった私たちは、手を繋ぎ街を歩いていた。拓哉の提案に頷き、帰路に着く。 「またな」 「ばいばい」 私の家に着き、あっさりした別れを済ませると拓哉は帰っていった。少し見送ってから家の中に入る。 私の胸はただ、罪悪感でいっぱいになる。
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