瞳を閉じて

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「はぁい?」 中からお姉ちゃんの返事が聞こえて、ドアノブが下がった。次の瞬間には、ひょっこり顔を出す私の姉、都。 「お姉ちゃんご飯だって」 「分かった。誠、行こう」 誠という名前に反応してしまう。お姉ちゃんの部屋から、出てきた背の高いイケメンこそ、誠君だった。 誠君はお姉ちゃんの恋人。もう付き合って2年にもなる。 すっかり我が家に溶け込んでいて、家族同然。結婚をも予感させていた。 「久しぶり、莉奈」 「あ、うん」 私は誠君が苦手だ。 上手く話すことができない。目があえば呼吸が苦しくなる。お姉ちゃんと一緒にいるのを見ると、胸が締め付けられる。 これが恋だということは、もう随分前に気がついていた。
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