瞳を閉じて

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拓哉の部屋は想像以上に綺麗だった。「綺麗だね」って言うと、「掃除した」と恥ずかしそうに言ってくれる。 私が来る前の散らかった部屋を想像して、少し笑いが出てきた。 それから適当に座り、ジュースやお菓子を食べながら他愛もない会話を繰り返す。 だけど徐々に、いいムードになってきたことは感ずいていた。 「……莉奈」 私の名を呼ぶその瞳は、優しげに「してもいい?」と尋ねているようだった。 実は、拓哉とはまだしたことがない。高校生の男女が7ヶ月付き合っていて、これはかなり珍しいと友達から言われた。 もちろん、拓哉が私を大切にしてくれていて、我慢していることは分かっていたから、こうしてお願いされたら断れない。 小さく、小さく頷いた。 拓哉は誠君とは違い、優しく、時々気遣いながら私に触れてきた。 ……誠君? そこで私は昨日の行為を思い出してしまうのだ。
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