瞳を閉じて

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フラッシュバック。 無理矢理抱かれ、やめてほしいけど、好きだからそんなこと言えない。 あの時の胸の痛み、苦しさ、後悔、嫌悪、憎悪……喪失感。 全てが一度に押し寄せて、激しく息が乱れた。涙で目の前が霞んで、目の前にいる拓哉が誠君と重なった。 「やめて!嫌!」 気づけば大きな声でそう叫んでいた。 誠君なら決して止まることなく行為を続けるのに、ピタリと行為が止んで、私は自分の過ちに気付く。 ぼんやりと、悲しい顔をした拓哉が見えてきた。 心底傷ついた顔だった。私まで胸が痛くなるような。 そりゃ、7ヶ月付き合った彼女とやっと……という場面で泣きながら拒否されたら……拓哉の心情を考え、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。 「ごめん莉奈……俺」 「違うの!ごめん拓哉……ごめん」 慌てて謝るが時遅し。もうそんな雰囲気ではなくなって、拓哉は布団を私にかけてくれた。
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