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しばらくして、頭の痛さで目を覚ます。いつの間にか寝ていたようだった。
泣きながら寝たから、目は腫れていて酷い有様だ。
時計を見ると夜8時過ぎ。
ご飯食べようかな、と私は重たい腰をあげた。ドアノブに手をかけかけた時、その動きはピタリと止まる。
「凄く美味しいですよ、お母さん」
「あら、誠君がそう言ってくれたら嬉しいわぁ」
……誠君が来ている。
私はリビングに降りるのを諦め、再びベッドへと舞い戻った。
今は誠君に合いたくない。
この気持ちが激しいくらい大きい。よく考えてみると、私は誰が好きなのか分からなくなっていた。
あれだけ誠君のことが好きで、どんな最低なことをされても許していたのに、なぜか拓哉のことが頭を離れない。
拓哉がもう二度と、私に笑顔を向けてくれることはないのだと思ったら、胸が痛む。
これはただ、「惜しい」という感情なのかもしれない。
拓哉はいい人だから、失ったら勿体ない。そんな気持ちかもしれない。いや、でも違うかもしれない。
自分で自分が分からなくなっていた。
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