瞳を閉じて

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「なに無視してんだよ」 入ってきた誠君は、怒りをあらわにしていた。確かに、ご飯のときも、今も無視したのだから、怒る理由はわかる。 けど、私だって今まで散々最低なことをされてきたのだ。 「入ってこないで。出ていって」 今日は真面目に、無表情のまま拒否をした。誠君はそれに驚き、一瞬戸惑いを見せたが、すぐに余裕な表情に変わる。 「俺にそんな態度とっていいと思ってんの?」 一体どこから目線なのだろう。 きっと、私が自分のことを好きなのは当たり前だと思っていて、そんな余裕から生まれた態度なのだ。 悔しい。 悔しい。 こんな人に、心を奪われてしまった自分が情けなかった。 「もう、誠君の言いなりにはならない!私を本気で好きじゃないなら近寄らないで!」 「は?お前誰にそんな口きいてんだよ」 私の反論に、誠君が口調を荒げた。今度は私が怯んでしまいそうになるが、負けるわけにはいかない。 拓哉に何か、学んだ気がする。 今まで好きだから言いなりになっていたけれど、それはとても悲しくて、無意味なものなんだと分かった。
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