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全てが壊れてしまう。
必死に隠し通してきたのに、あっさりバレてしまった。誠君がドアをちゃんと閉めていなかったのだろう。
「……莉奈、どういうこと?」
お姉ちゃんはなぜかとても優しく聞いてきた。それは怒りをごまかしているだけなのだろうか。
「だから、都……」
「誠には聞いてない!」
誠君が何か言おうとすると、お姉ちゃんは大きな声で怒鳴った。おかげで誠君は黙りこみ、私は話しやすくなる。
「ごめんね……お姉ちゃん。あのね……」
私は誠君とお姉ちゃんが付き合ってから、その最中、どうやってこういう関係になっていったのかを順序よく話した。
優しく聞いてくれたお姉ちゃんに、嘘はつけなくて、誠君が好きだったことや、拓哉を利用して付き合って、今日別れたことまで話した。
お姉ちゃんはただ黙ってきいていた。
微かに、両手の拳が震えていた。
「莉奈」
すべてを話し終えた後、お姉ちゃんが名前を呼んだ。申し訳なくて、頭を垂れていた私は頭をあげる。
「辛かったね」
え?
思ってもみなかった言葉。最低な私に、お姉ちゃんの彼氏を好きになった私に、お姉ちゃんは優しくそう言ってくれたのだ。
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