瞳を閉じて

23/28
前へ
/304ページ
次へ
「お姉ちゃん……怒らないの?なんで怒らないの!?」 私がそう言うと、お姉ちゃんは少し間を置いてからハッキリ言った。 「1番の被害者は、莉奈だよ。私よりももっと傷ついてるはず」 嘘だ。 2年も付き合っていた彼氏に、裏切られていて傷つかないはずがない。絶対お姉ちゃんのほうが辛いのに。 「……ごめん。お姉ちゃんごめんね」 私は必死に謝ることしかできなかった。 お姉ちゃんの心の寛大さを、改めて尊敬した。私はこの人が大好きだ。お姉ちゃんで良かった。 「ほんとはね、少し前からあんたらに何かあるなとは思ってたの。莉奈は誠がくると様子がおかしくなるし」 そんなカミングアウトに驚いた。そこまでお姉ちゃんが鋭かったなんて。 「……誠」 低い言葉が響く。 今まで会話に入れなかった誠君が、ようやく喋れるときがきたのだ。 「別れよう」 その言葉には私も誠君も目を見開いた。まさか今、そうなるとは思わなかったから。 「は!?俺の話しも聞けよ。何で莉奈の言うことを信じるんだよ」 確かに、私の話しだけでそんな重要なことを決められては困る。誠君が嘘を言うかは別として、話し合いはしたほうがいいと思う。
/304ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1866人が本棚に入れています
本棚に追加