瞳を閉じて

25/28
前へ
/304ページ
次へ
「ちょっと、なにするの!」 私は慌てて携帯を取り返そうとしたが、ひらりとかわされてしまう。 一体何をしようとしているのだろう。 誠君は少しいじってから、携帯を耳にあてた。まさか、誰かに電話をかけているのだろうか。 「あーもしもし?お前、拓哉だろ?」 誠君がそう言った。 拓哉に電話をかけていたんだ! 一体何を言うつもりなんだろう。誠君が携帯をスピーカーにしたので、拓哉の戸惑いの声が聞こえてくる。 「やめてよ!返して!」 必死に携帯に手を伸ばすが、長身の誠君には全く届かない。 『莉奈?』 私の声が聞こえたのか、拓哉がそう呼ぶのが分かった。こんな状況なのに、嬉しいと思う自分がいた。 嬉しい? 「莉奈はな、俺とヤッたんだよ。お前は遊びだったわけ。しかも俺、莉奈の姉貴の彼氏なんだぜ?こいつまじ最低な女だと思わない?」 誠君は笑いながらそう言ってのけた。 やめてよ。しられたくないのに。軽蔑されてしまう。汚いって離れていってしまう。 「やめてよ!!」 私は叫び声をあげた。それと同時にお姉ちゃんが誠君に近寄り、ビンタを一発お見舞いした。 誠君が落とした携帯を見ると、すでに電話は切れていた。
/304ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1866人が本棚に入れています
本棚に追加