瞳を閉じて

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「誠……あんたまじで最低だね。出ていって。もう二度と顔合わせたくない」 お姉ちゃんは今まで見せたことのない程、怒った顔をしていた。誠君は満足したのか、晴々とした顔で家を出ていった。 2年も続いたお姉ちゃんたちの終わりは、こんなにも呆気なく、こんなにも悲しいものになるなんて。 「ごめん莉奈。あたしのせいで」 お姉ちゃんが涙をこぼした。 全く悪くない彼女を泣かしてしまったことに胸が締め付けられ、精一杯首をふる。 「いいの、もう。拓哉なんてどうでも良かったから」 気にさせないように、あからさまな嘘をついてみせた。どうせもう、拓哉は私を軽蔑し、7ヶ月分の愛も消えうせただろう。 「嘘だよ。莉奈は、拓哉君が好きなんでしよ」 私が? 意味が分からなかった。拓哉を好きになろうと頑張ったけど、好きになれなかったから別れたのに。 「昔、お婆ちゃんが言ってたこと覚えてる?」 「……瞳を閉じて……」 「そう、それ」 お姉ちゃんは懐かしい目でそう言う。忘れるわけがない。あの頃、小さかった私にとってお婆ちゃんのその話しは、とても胸がどきどきしたのだ。 「当たり前すぎて気づかなかったけど、失って気づくものがあるんだよ。莉奈、瞳を閉じて」 お姉ちゃんの言う通り、私は目を閉じた。
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