瞳を閉じて

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「そこに、莉奈の心の中で1番大事な人がいるはずだよ」 お姉ちゃんの優しい声が響き、私は脳裏に浮かんでくる映像に集中した。 その人はいつも私の側にいて、いつも優しくしてくれて、いつもこんな私を好きだと言ってくれて。 近くにいすぎて気づかなかったのだろうか。 いつの間にか大好きになっていた笑顔に。 拓哉の笑顔に。 「行ってきたら?早く誤解解かないと」 「……でも」 「悩んだってしょうがない。後で後悔するより、今してきなさい」 「うん」 私はお姉ちゃんに背中をおされ、走って家を飛び出した。目指すのは拓哉の家。 早く会って伝えなきゃ。 「……莉奈!」 少し走ったところで、夕闇の中から拓哉が表れた。汗だくで、でも確かに私の名前を呼んでいた。 「なんで?」 「さっきの電話の奴、殴ってやろうと思って、お前の家に向かってたんだよ」 おかしい。 なんで、私のことこんな普通に見ているんだろう。 「私のこと、軽蔑してないの?」 「するわけねぇだろ。何か事情があるのは分かってたし、さっきの電話でなんとなく、理解できた。……色々辛かったんだろ」 拓哉の優しい瞳が、私の涙腺を緩くした。
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