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きみの隣は、俺のものだと思っていた。
「かーずま君」
可愛らしい笑顔で、俺の名前を呼ぶのは久美。お向かいのマンションに住んでいる同級生。
だから、保育園の頃から仲良しで、小学3年生のこの時も、いつも俺の家で遊んでいたのだ。
俺は久美が好きだったし、久美も俺が好きなんだと思っていた。
「久美ね、好きな人ができたんだ」
だから、幼いながらにそう言われたとき、俺はかなり傷ついた。裏切られたとさえ思った。
当たり前だったことが、実は当たり前でなかったことに気づく。
この日から俺は久美を避けるようになる。
些細な俺の反抗だったのだ。
「和馬君……何で無視するの?」
無視される意味が分からない久美は、悲しそうな目で俺を見つめる。それでも無視。
いつも学校が終わったら俺の家で遊んでいたから、無視しても久美は俺の家の前までついてきていた。
この日も、マンションまでついてくる久美に意地悪してやろうと、エレベーターではなく階段を駆け上がる。
久美は必死に俺についてきた。
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