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か細い足で、俺の速さに敵うはずがないのに、必死に駆け上がってくる彼女。
俺は苦しそうな顔を見て、少し胸が痛くなった。
このころはまだ、罪悪感なんて言葉は知らないから、胸の痛みの原因なんて分からなかったのだけど。
「かず……ま君!待って!」
俺はぴたりと止まった。
振り返ると、久美が嬉しそうな顔で階段を上ってくる。俺も疲れたというのもあったし、再度聞きたいこともあった。
「久美ちゃん好きな人いるの?」
ここまで必死に俺を追いかけてきたんだから、もういるなんて言わないだろう。
根拠もなしに、そう思う。
「いるよ!」
久美は笑顔でそう言った。
幼い俺の中で、思い通りにいかないことへの怒りから、なにかがプツリと切れた。
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