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「あ、あの……」
私は何か上手い言い訳がないか考える。だけど、他人の家に勝手に上がり込んでいる、記憶喪失の自分に言い訳しようがなかった。
目を泳がせながら、相手の反応を伺う。男の子は瞬きもせず私を見つめ、静かに唇を震わせていた。
「……結衣」
口が微かに動き、男の子は誰かの名前を口にした。
「あの、すいません!勝手に家に上がり込んだりなんかして」
訳が分からないまま、取り敢えず謝っておいた。すると男の子は更に驚いた顔をした。
「なに言ってんだよ!結衣……俺のこと忘れたのか?」
急に感情的になった彼は、状況を飲み込めない私の肩を揺さぶる。
結衣って私のこと?彼と知り合いなの?
頭が痛い。
「結衣の彼氏の亮太だよ!」
痛い。頭が激しく痛い。
亮太?彼氏?結衣?
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