きみの隣

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「久美ちゃんなんて嫌いだ!」 俺はそう叫び、久美を突き飛ばした。軽く、自分から離すために押しただけだったんだ。 俺は忘れていた。 後ろが階段だということを。 気づいた時には、もう遅い。久美はコンクリートの階段をうめき声をあげながら転がり落ち、そして最後全身を打ち付け止まった。 久美の目は伏せられていて、赤い血がコンクリートに広がるのが見えた。 俺は目の前が真っ暗になり、その場から動けず、ただただ、倒れている久美を見つめていた。 死。 幼い俺でもそれは理解できる。嫌な予感が頭を過ぎり、全身が震えていた。 何分かして、出てきたマンション住民により救急車が呼ばれ、病院に運ばれた久美は幸にも命に別状は全くなかった。 頭を数針抜い、左腕を骨折したようだ。 母親とお見舞いにいき、謝る俺たちに、久美は「なんともない」と笑った。 それから、俺は久美と一緒にいる度、胸が痛くなり、近くにいることを拒むようになった。
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