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「なに溜め息ついてんだよ」
急に目の前から突っ込まれ、びっくりして目を見開く。そこにはニヤニヤ笑った友人、奏がいた。
「ついてねえよ」
思いっきりバレバレな嘘をつき、更に自分を追い込んでしまう。先ほどまで久美のことを考えていたから、なぜか同様せずにはいられないのだ。
「お前さ、今自分が誰見て溜め息ついたか知ってる?」
「え?」
俺、誰かを見てたのだろうか。
無意識だったので、全く身に覚えがない。頭の中の記憶に意識を集中しすぎていたようだ。
「とぼけんなって。久美ちゃん見てただろーが」
心臓が跳ねた。
やばい。完全に無意識だった。まさか自分が久美を見ていたなんて。
「その顔は図星だな」
奏はしてやったり顔で、とても満足そうだ。俺はすぐに顔に出るタイプだから、いつも心を読まれてしまう。
「違う」
「嘘つけ」
「ちげえよ!」
ついついムキになって大声を出すと、クラスの数名がこちらに注目した。慌てた奏が「声でけえよ」と頭を叩く。
咄嗟に俺は、久美がこっちを見ていないか確認していた。
見ていない。見る素振りもない。俺には興味なし、という感じだな。
神様はどうして、よりによって久美と同じクラスにしたのかと、本当に恨む。
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