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痛いっ……。
「あ……亮太」
頭に激痛が走った瞬間、私は目の前の彼が誰なのか、自分が誰なのかを思い出した。
そう、亮太は私の彼氏で、今日遊ぶ約束してたんだった。
「やっと思い出したか」
安堵したように笑みを見せ、溜め息をついた亮太は、なぜかどこか悲しそうだった。
「ごめんね。私、なんか記憶喪失なのかな?急に何も思い出せなくなっちゃったの」
亮太の悲しそうな瞳なんて見たくなくて、慌ててそう弁解した。だけど彼の瞳は曇ったまま。
私の大好きな光りがない。
「そっか……」
亮太はそう呟いて、口を固く閉ざした。
2人が沈黙し、時間だけが過ぎていく。私は頭が痛かった。そして何も言ってくれない亮太に、胸が痛かった。
「あ、私そろそろ帰るね」
苦渋の決断。亮太は私がいるから悲しいんだって解釈してしまい、泣きそうになった私は立ち上がった。
「え……駄目。行くなよ」
だけどそんな私を止めたのは亮太。手の平を握って、冗談でなく本気で。
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