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長い1日だった。
いつもと時間の進みは変わらないはずなのに、久美を意識しないようにしているだけで、時間はとても長く感じられた。
無理をしている証拠だろう。
久美が気になって仕方ないのに、何も感じないように振る舞うのにはかなり疲れた。
奏は多分気づいていただろうけど何も言わない。
下校のため一緒に玄関に向かっている今も、何事もないように他愛もない会話をしている。
「……あ!」
引っ切りなしに口を動かしていた奏が、いきなり言葉を詰まらせた。目線は前方に向かって止まっている。
その視線を辿ると、先には久美と坂下がいた。
「久美ちゃん、またちょっといいかな」
「はい、全然大丈夫ですよ」
考えなくても分かった。
きっと坂下は告白のやり直しをするのだろう。そして久美はOKする。ハッピーエンドというわけだ。
冷静に考えているようで、実際はパニック状態だった。
久美を取られたくない気持ちと、久美を諦めたい気持ちが交差する。
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