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だけど俺はすぐ行動できなかった。
やっと決断したのに、今動いてしまえばまた振り出しに戻ってしまう。
また傷ついて、傷つけるだけ。
そう考えると動けない。
「行けよ、和馬」
奏はついにそう言った。俺がしぶっているからだろう。
促されても、昨日のように簡単に足は動かない。
「和馬!」
奏の声は大きくなる。イライラが感じられた。
「でも……俺は……」
情けない声で俯く。
すると肩を強く殴られた。痛みと驚きで顔をあげると、鋭い視線を投げかける奏と目が合う。
「なにごちゃごちゃ考えてんだよ。好きなら好きで突っ走れ。昨日みたいに感情で行動するのがお前だろ!お前らしくねぇことしてんなよ!」
奏の言葉は胸に重く、強く響いた。
そして自分の中で、張り詰めていた糸が切れた気がする。
何を思いつめていたんだろう。素直に気持ちぶつければ、それでいいじゃないか。
「……行ってくる!」
「おう!」
俺は坂下と久美の影を追い、走り出した。
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