きみの隣

19/26
前へ
/304ページ
次へ
だけど俺はすぐ行動できなかった。 やっと決断したのに、今動いてしまえばまた振り出しに戻ってしまう。 また傷ついて、傷つけるだけ。 そう考えると動けない。 「行けよ、和馬」 奏はついにそう言った。俺がしぶっているからだろう。 促されても、昨日のように簡単に足は動かない。 「和馬!」 奏の声は大きくなる。イライラが感じられた。 「でも……俺は……」 情けない声で俯く。 すると肩を強く殴られた。痛みと驚きで顔をあげると、鋭い視線を投げかける奏と目が合う。 「なにごちゃごちゃ考えてんだよ。好きなら好きで突っ走れ。昨日みたいに感情で行動するのがお前だろ!お前らしくねぇことしてんなよ!」 奏の言葉は胸に重く、強く響いた。 そして自分の中で、張り詰めていた糸が切れた気がする。 何を思いつめていたんだろう。素直に気持ちぶつければ、それでいいじゃないか。 「……行ってくる!」 「おう!」 俺は坂下と久美の影を追い、走り出した。
/304ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1866人が本棚に入れています
本棚に追加