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「……え?」
自分の置かれた状況が理解できないのか、目を見開き固まる久美。目が泳いでいて、何か考えている様子。
「なに言って……嘘でしょ……え?」
言動から、よっぽど衝撃的だったことが伺えた。引き攣った笑いになっている彼女に、もう一度伝える。
「嘘じゃない。好きだ」
恥ずかしさは消えていた。
きっと坂下のことがあって、必死だったんだと思う。普段の俺なら2回も「好き」だなんて絶対言えない。
「……う、嘘だ」
そういう久美の目には、涙が溜まっていった。
今度は俺が戸惑ってしまう。
「え……なに泣いてんだよ。俺、なんかした?」
焦ってそう聞くと、小さく首をふる久美。原因が俺でないことに安心するが、落ち着いてはいられない。
久美の涙を見ると、情緒がおかしくなりそうだ。
「面白くねぇな」
すると、後ろからさっきまでとは打って変わった声が聞こえてきた。主は聞かなくても分かる。
坂下だ。
さっきまでの誠実そうな態度ではなく、腕組みと眉間にシワで随分とガラが悪くなったものだ。
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