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「折角遊んでやろうと思ってたのに、別の男とよろしくやってんなよなぁ。つまんねーな」
吐き捨てるように言った言葉に、俺は怒りを感じる。久美は訳が分からないというように、呆然とした顔で坂下を見ていた。
「ふざけんなよ」
俺が凄みをきかせて言うが、流石先輩。そんなことでは怯まない。逆に挑発するように、鼻で笑ってみせた。
「まぁ、いいや。お前みたいな低レベルな女、相手する時間は惜しいから手を引いてやるよ。じゃあな」
坂下は久美に歩みより、そう言うと笑いながら歩いていった。
ぞわぞわと、体の奥底から沸き上がる怒り。俯いている久美は、泣いているのだろうか。
拳を握りしめ、坂下を見据える。
「てめぇっ……」
殴りかかろうとした時だった。
俺の腕は強く握りしめられ動きを止めた。
「久美、離せ!」
あんな最低な奴、一発くらい殴らないと気が済まないのに、それをさせてくれないからイライラが募る。
久美は大きく首をふった。
「あんな奴、殴る価値もないよ」
その瞳には確かに強い怒りが感じられた。
我慢しているのだ。
きっと、相手は先輩。俺が今手を出せばきっと返り討ちにあってしまう。学校でのリンチの理由になる。
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