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意味が分からず戸惑う私の手を、亮太はそっと離した。そして立ち上がり、優しく抱きしめてくれる。
おかしい。普段こんなことする人じゃなかったはずなのに。
だけどやっぱり嬉しくて、もちろん迷わず抱きしめ返した。
「結衣、しばらく俺ん家にいない?」
「えぇ……どういうこと?」
「あんまり考えなくていいんだよ」
亮太はいきなりそんな訳が分からないことを言い出し、私の質問には答えず上手くはぐらかした。
そのせいで、私はそれ以上追求できず、ただ不安ながらも了承するしかなかった。
「じゃあ母さんに電話しなきゃ」
「いいから。俺がしとく。結衣はただ俺の傍にいて」
何かがおかしい。
だけど分からない。
私は何か重大のことを忘れている気がする。
だけどなにも思い出せなくて。
「……うん。分かった」
ただそう頷いた。
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