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1番傷ついた本人が我慢しているのに、俺が突っ走るなんてできなかった。
坂下はもういなくなっていた。
「……久美、もう離していいよ。殴りにいったりしねぇから」
力強く握りしめてくる腕にそう言うと、ゆっくり力が弱まり離れた。
「和馬君……さっきのことだけど」
口を開いた久美は、下を向いてそう言った。
一瞬にして、先ほどの告白が蘇る。いっきに顔が熱くなるのが分かった。
あの時は必死だったし、熱くなっていたから感じなかったのだけど、よく考えたらとても恥ずかしい。
感情で動いてしまう自分に、嫌気がさした。
奏はそれが俺だと言っていたけど。
「あ、あれは」
「ほんとなの?」
俺の言葉を遮り、久美は聞いてきた。言い訳は通用しない。ここまできたなら素直に言ってみようか。
「……おう」
照れ臭いので目は合わせられない。
久美の反応が分からないので、とても怖かった。
「……私も、ずっと……」
「え?」
久美の声はとても小さくて、後半が聞き取れない。聞き直すと、顔をあげてしっかりと答えた。
「私もずっと好きだったの!」
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