七夕のキセキ

8/13
前へ
/304ページ
次へ
「転校ってどこ行くんだよ!」 勇士の友達の男子が、切羽詰まった顔で聞いた。 ナイスな質問。もしかしたら隣町とか、悪くても隣の県くらいかもしれない。 それならば会うチャンスはいくらでもある。 わずかな希望に賭けて、私は目を閉じて返答を待った。 「……アメリカ」 勇士の答えは予想もしていなかったもので、あいた口が閉まらなかった。 アメリカって、アメリカ合衆国だよね? え?外国? 飛行機で何時間? もう……会えない。 頭をよぎる、絶望。 「勇士はお父さんの仕事の都合で、遠いアメリカまで行くことになったんだ。今日出発だそうだ。みんなで見送ろうな」 見送ってしまえば……もう……。 それからの時間はあまり覚えていない。涙は出なかった。突然すぎてついていけなかった。
/304ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1866人が本棚に入れています
本棚に追加